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【短文】視ている景色が、同じである事
エグゾダスのPVで、総士と一騎が楽園前で(物理的に)二人で並んで、同じ高さで、同じ方向を見ているシーンで思わずうるうるしてしまいました。
今までTVシリーズでも、二人が並んで同じ方向を向くことはありませんでした。
どちらかが先に進んでいたり、二人で並んでいても全く違う方向を見ていたり(初期キービジュでしたっけ)

二人が並んで同じ高さで、同じ方向を見ているという【視覚的な部分】で、実際は目に見えない「島への想い」だったり「望む未来」だったり「視ている相手への気持ち」が、やっと並んだんじゃないかと思ったり。

今までは「話さなければ分からない」事や、「話してないのに勝手に相手を理解したつもり」になってたり、「話さなくても通じてる」と思っていたけど実際は通じてなかったり。そういったズレがやっと解消されて「対話して通じる」部分と「対話しなくても相互理解」出来てる部分とがちゃんとあって良いバランスの関係になったんじゃないのかな、なんて思いました。幼少時から考えると、やっとですね…!(´;ω;`)

本当こんな幸せな時期はアニメではそこまで描かれずに(想像で補える故)本編の過酷なストーリーへと突入するんだろうなぁと思っているので、そんなつかの間の幸せを短文にしてみました。

ちなみに最初に真矢ちゃんが出てきますが、真矢ちゃんは一騎君への気遣いが出来る本当に良い子だなぁというフィルターが掛かってます。外での二人の様子を見て一騎の笑顔を見てホッとしながら若干落ち込んでます。
そう考えるとTV版初期総士の対応が子供っぽく感じたりしましたがそもそも子供だったしね!背負ってるもの多かったしね!対応が不器用にもなりますよね!っていう。また見返したいです。

長くなってしまいましたが以下短文です。



喫茶≪楽園≫はランチの混雑した時間が終わり、店内には閑散とした空気が流れていた。
次に混むのは学校終わりの子供達がおやつを食べに来る時間だった。
その合間にそれぞれ休憩を取るのだが、今日は真っ先に真矢に「一騎君、休憩入ったら?」と言われた。
いつもは真矢が「疲れたぁ」と言いながらつい数分前まで混雑していた店内の椅子に座りテーブルに突っ伏して「お腹空いたねぇ」と言うのだが。
少し不思議に思ったので「遠見はいいのか」一騎がと聞くと「私はたまには片付けやってから休憩入るから」と言った。

「じゃあ俺も手伝うよ」

と言いながら真矢に近付くと。

「良いって良いって。たまにはゆっくり休憩入ってよ、ね」

強引に背中を押されながら、一騎は戸惑いながらも頷き、≪楽園≫を出た。
眼前には真っ青な空、海が広がっていた。そして、目の前の腰程の高さの柵に座っている背中が見えた。

「総士、どうしたんだ?」

声を掛けると総士が振り返った。
目元には眼鏡をつけており、その瞳の色は決して赤くはない。
平和な日々の中、どうしても瞳の色を確認しては安心してしまう自身が居た。

「いや……気分転換に来てみたんだが、忙しそうだったからな」

来てみたものの混雑していたから諦めたのだろう。
しかし、混雑しているとはいえ食事の為だけに来たならば、店内に入って待てば良かった筈だった。
それなのにこんな所で待っていると言う事は、【食事】が目的なのではなく。

「あぁ、この時間は混んでるから、ごめん」

「いや、僕ももっと時間を考えて来るべきだった」

「でも、食事だったら気にしなくてよかったのに」

と少しだけ踏み込んだ。

「…………お前と……いや、これ以上混雑したらお前だけではなく皆が大変だと……」

言葉を選んで答える総士に、一騎は思わず途中で吹き出して笑ってしまった。
総士は笑われた事を憤慨だとばかりにこちらを睨んだ。
一騎は笑いながら「ちょっと待ってて」と一度≪楽園≫へと引き返した。
そして余っていたサンドイッチのパンにチキンやレタスを挟み、お皿に乗せて総士の下へと持っていった。
「はい、とりあえず」と言って総士に渡すと総士は小さく「すまない」と言った。
「俺も昼、まだだったからさ」とふんわり一騎は笑って手渡した皿から一つサンドイッチを掴み頬張った。
そうして二人で蒼い景色を見つめながら、昼食を済ませた。

静かな時間、二人で並んで食事が出来る、日常。
ふと、総士の視線が斜め上を見つめていたので、それを追いかけて一騎も空を見上げた。
吸い込まれそうな蒼穹。海と空の間で、自分がふわふわと浮いている感覚。

いつも、大事な時にはこの≪空≫があった。
一緒に飛んだ時も、離れた時も、繋がっていた時も、帰って来た時も。

その蒼穹を、総士と見つめていると、じんわりと涙が溢れた。
今まで、これ程の平穏が訪れたことはなかった。
子供の頃、すれ違ってから。
ファフナーに乗ってからもそれはズレたままで。
クロッシングをしているのに、お互いの見ている≪景色≫も、目指す方向も、視線の高さも交わらないままで。
少しづつ、分かり合えたと思ったら、それは別れの始まりだった。

だから、一騎はこの日をずっと待っていた。
二人で、同じ≪景色≫を、同じ高さで、方向で、並んで視ることの出来る平穏を。

空に向けた視線を隣に居る総士へ向けると、同じタイミングで総士の視線が一騎の方へと向けられ、視線が交わった。

「どうしたんだ、一騎」

「いや、なんでもない」

なんでもないというには涙が目の端から溢れていた。

「……泣いているのか」

少し躊躇いながら涙に触れる言葉と、頬に伸ばされる手。
そのまま涙の雫を冷たい指が掬ってくれた。

「ずっと、望んでたから」

涙の理由を一言に込めて、総士に向かって声に出した。

少し考えた総士が言ったのは「……そうか」という一言で。
その一言には全てが詰まっていた。総士が少し照れて居る事も、同じ気持ちを共有出来ている事を。

話さなければ、伝えなければ分かり合えない事は沢山あった。
けれど、伝えなくても分かりあえる事も、今はある。
例えば、今日の日がとてもかけがえのない、幸せな、日常である事。

(だから、俺は……)

総士と視線が交わると笑顔になった。
総士と同じ蒼穹を見ていると笑顔になった。
この日常が続く限り、一騎は、笑っていられる、と思った。
それは総士も同じだと、思うから。

(総士が居れば、俺は笑えるんだ)

end

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ちなみにこの文章はPVとけのさんに描いていただいたスケブを元に妄想しております。
勝手にすみません…!ご馳走様でした!

ちなみに瞳の色のくだりは総士に対してだけでなく目が見えるようになった自分に対してや、皆に対して思ってることだったら良いなぁと思ったりしましたがまた別の機会に妄想したいなと思ったりしました。

そしてここまで読んでいただいた方がいらっしゃいましたらありがとうございました!
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