気まま

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【後輩組】ひらひら廻り
※pixivの下記ページに全く同じものをUPしてます!
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5877872

2011年5月に発行した後輩組個人誌です(全5ページあります)
2011年は天地公開後なので、天地の本編に沿った内容になっています。エグゾ前半戦を見ている今、改めて読み返すと、それぞれの心情や行動理由が天地から更に変化していて面白いなあと思ったりします。また後輩組をガッツリ妄想したいです!エグゾ後半戦が終わったら…。突然のup理由がエグゾ14話の現実に自分の心が耐えられなくて現実逃避がてらのupでした、も、もっと早くにupしておけば未来ある感じに捉えられたのにね…。

ちなみにこの本には挿絵も沢山あったので、いつの日かけのさんがネット上に置いてくれるのを期待してます!()
ここまで読んでいただきありがとうございました!少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

※読み返していて暉の一人称に自分で「!?」となりました。
天地チェックしたら天地時の一人称は「僕」でしたね!エグゾですっかり「俺」に慣れていました。


▼散り散りの想い


「痛い、助けて、痛い、助けて、いたい、たすけて、いたい、たすけて」

フェストゥムの叫びを繰り返しながら、慟哭する芹。眼前で死に逝く命に手を差し伸べる事も出来ず、ただ激しく泣く事しか出来ない。だから、繰り返し、繰り返し、フェストゥム達の聞こえない叫びを声に出し、泣いた。

「芹っ、あんた何泣いてんのよ!」

「倒さなきゃやられるんだぞ!」

「なあ、泣くなよ、芹」

「芹、前!敵来るよ……!ねえ!」

仲間達の苛立つ声や戸惑いの声よりも、その慟哭は響き続けた、それでも。芹は戦う、倒す。

「何で……っ、こんな……っ、もう、やだよぉ……!」

言葉にならない「何故」が、芹の喉を締め付ける。声が枯れていく。倒した敵の数だけ、芹は声を上げた。自分自身を傷つけるように。

「芹、あんたどういうつもり?」

里奈がパイロットスーツのまま、機体から降り、ぼんやりとしている芹へと突進していく。泣き疲れた芹は目が赤く腫れていた。

「痛い助けて痛い助けてって泣いてばっかで!」

「だ、だって、あの子達みんな、倒す前、痛い助けてって言ってたんだよ……!」

「そんな事言ってなかった」

「言ってたもん!だから、だから、痛がってるのに何で倒さなきゃいけないの……!」

「倒さなかったら、島が、私たちが死ぬんだよ!」

里奈の言葉が身体全身に刺さる。その通りだ。

「分かってるよお……!だからっ、だから倒したじゃない……!」

再び涙が溢れる。自分自身「何故《殺さ》なければいけないの」かを、疑問に思い、フェストゥムの苦しみの言葉を聞いていても尚、倒し続けている事実に。

「な、なあ芹、島を守る為なんだからさ、仕方ないんじゃないのか」

広登が恐る恐る二人の間に入る。その様子からは、いち早く平常心に戻ったようだった。

「仕方無いんじゃない。倒すべき相手なのよ、あいつらは」と素早く広登の言葉を里奈が否定した。

「だけどよお……、芹が……」

沈黙が三人の中を流れる。芹が涙を拭いながら、自身の機体を見上げる。

「分かってる、分かってるよ……私だって、島を守りたい。だから、乗ってるんだもん」

「芹……」分かってくれたかと、広登が安心したように肩の力を抜いた。しかし、芹は続けた。

「でも、仕方無いなんて思えないよ……生きてるんだよ、みんな」

瞬間、芹は頬に衝撃を受けた。視界が明滅する。頬から痛みがじんじんと伝わる。
痛みと同時に「馬鹿っ!」という里奈の声。足音が走り去る。涙の跡の上に、平手打ちで赤く染まる頬。

「馬鹿なのかなあ、私……でも……っ」

そして、再び、涙が流れ出した。芹の眼からも、走り去った里奈の眼からも。
その様子を近くで見ていた暉は、何が起きているのか全く分からなかった。戦闘後にこんな激しい言い争いを間の当たりにして、どうして良いのか分からなかった。むしろ広登があの二人に割って入った事にも、驚きがあった。
どうしていいのか分からず、傍にいた真矢に思わず声を掛けた。

「あ、あの、遠見先輩、声、掛けなくていいんですか?」

とにかく混乱に満ちたこの場を納めて欲しかった。真矢であればそれが出来ると思った。

「暉君は里奈ちゃんを追わないの?」その《誰でもいいから》と助けを求める問いかけに、真矢は真っ直ぐと「暉」に質問した。痛い質問だった。
里奈の後姿を視ようとしたが、直ぐに視界から消えた。里奈の顔はきっと涙でぐちゃぐちゃだろう。しかし、消えた背中は、丸くならず、張りつめながらも凛と奮い立っていた、独りで。

「里奈は……大丈夫だと思います」真矢の方を見ず、その消えた背中の先を見送りながら答えた。

「どうして?」

「だって、僕に慰められても怒るだけだから」

「そんな事ないんじゃないかな」

甘く厳しい声。「そんな事あるんだ」と思うのに、言葉が出なかった。その理由を言っても「理由にならない」と一蹴される気がした。
想いを巡らせる沈黙も、真矢はしっかりと「言葉」として捉えていた。

「黙ってたら、里奈ちゃんには何も伝わらないよ」

「……今までずっと、話せなかったから」

「じゃあ、今からちゃんと話せば、分かりあえるよ」

はっきりと断言する言葉は優しく、厳しい。真矢の言葉がじんじんと暉の心に絡まる。伝えられなかった気持ちが真矢の言葉で溢れだしてくる。
その想いを抑える様に、もう一度、里奈の出て行った方向を見据えた。


皆の気持ちがバラバラと、絡まる。



▼堂馬広登 Sein Gedanke



「どうした、広登」

「カノン先輩……」

通路のソファで中空を見つめる広登が視界に入ったので声を掛けた。広登はぼんやり、というか放心状態に近かった。膝にはゴウバインのヘルメット。手でしっかりと支えている。

「今日の戦闘、疲れたのか」気付かうように言いながら隣に腰を下ろした。

「戦闘、もですけど」

「戦闘ではないのか」と繰り返して直ぐに、先程の芹と里奈の言い争いの現場を思い出した。

カノンもその言い争いの現場を目撃し、同じように動揺していた。そして、直ぐに真矢や咲良にどうするべきか相談をしていた。二人の結論は同じだった。「やらせておけ」と。
真矢は『初めてお互いの心の奥まで触れたんだもん、ここでちゃんとぶつかっていかなきゃ、後で崩れちゃうよ』と言った。咲良は『喧嘩しておいた方が、後が楽だよ』と言った。そして、『まあ、戦闘中のフォローは私達が頑張らなきゃね』と苦笑した。
何となく分かり、何となく分からなかった。
ただ、あそこでお互いが黙っていたら、何も伝わらず、ずっとお互いもやもやした気持ちで居たんだと思うと、喧嘩になるのは正しいのだと思った。
取り返しがつかなくなるまで黙っているのは良くない。声に出さなければ、分からない事があるのだから。

広登も、カノンと同じ気持ちなのだろう。仲の良かった仲間内での亀裂、初めて知る気持ちをどうしていいのか分からないのだ。(ならば、私が相談相手にならなければ、な)とカノンは静かに気合いを入れた。

「二人の事か」

「え?」

「里奈と芹の事で悩んでいるのか?」

ゆっくりと、頷く。その頷き方がまるで『珍獣に会ったのか?』と聞かれた時のような恐る恐るといった動作で、少し笑いそうになってしまった。

「俺、びっくりしちゃって」

「何がだ?」

「全部……。戦闘中に芹が泣いたのにも、里奈が怒ったのにも……」

まだ瞼に光景が焼き付いている。それは戦闘中の高揚感を一瞬で覚ましてくれた。

「俺、衛先輩みたいにみんなを守りたいって。そう思ってたのに」

膝に抱えたゴウバインヘルメットを見つめる。下を向き、涙が溢れそうなのを必至で耐えるように、持つ手に力が入り、震えていた。

「芹は、敵を倒す度に泣くんだ……」

理解出来ない芹の涙。

「そうだな」
「芹は、何を守ってるんだろう?」口にしてはいけないと思っていた疑問。それでも、声に出した。芹を理解したいと思ったから、仲間だから。

「だって、フェストゥムは、人間じゃないんだろ」

まるで芹が目の前に居るように、俯きながら問いかけた。今《此処》には居ない筈なのに、目の前の《芹》の眼を見れない。その言葉が芹を更に傷つけると知っているから。結局、里奈と同じ感情しか持てなかった。
堪えていた涙が、どうしようもない疑問にぶつかり、行き場がなく、ボロボロと溢れだしてしまった。それでも堪えようと唇を噛みしめる。俯いた広登から嗚咽が漏れた。唇の皮から血の味がしても、止まらない涙を手で止めようと顔に伸ばす。その時、ゴウバインヘルメットが床に転げ落ちた。
そのヘルメットをカノンが拾い、広登の眼の前に差し出した。そして、黙って広登の言葉を聞いていた口を、ゆっくりと開けた。息を吸い込む。新鮮な空気が肺に溜まる。そして、言葉を紡ぐ。

「広登。お前自身がどうしたいのかが、大事なのではないか?……芹の気持ちも、里奈の気持ちも分かるお前が、《どうしたいのか》が……」

広登が顔を上げると、カノンが優しくヘルメットを手渡した。それを受取りながら、《衛》の生きざまが走馬灯のように過ぎた。一瞬のような、最期の瞬間。きっと友達、皆の事が好きだったのだろう。
そんな風に守りたくて、いつまでも皆と一緒に居たくて。

「俺は……みんなを守りたいんだ」

ヘルメットに誓う様に、強く握りしめる。

「だって、それが、いくじなしの俺に出来る、唯一の事だから」自身の弱さは分かっていた。だから、このヘルメットに勇気を貰っていた。
涙を袖で拭い、カノンに向き直り笑う。ぎこちない笑顔。その笑みにカノンも笑う。

「弱さを見せることは勇気だと、私は思う。だから、お前なら出来るさ」

背中を押すように、言った。肩の力が抜けたのか、広登はもう一度笑い、言った。

「また平和になったら、学校でさ、里奈と芹と暉と、」

当たり前だった日常を願った。



▼西尾暉・里奈 Zwei Gedanke/Widerspruche



真矢の言葉が頭の中で響き続ける。生きている時間の殆どを共有しているのに、理解出来ない。双子の半身の心情。
初めてのメディテーションテストの時を思い出す。ついこの間の事なのに、その衝撃はシコリの様に、暉の心に残っていた。
《燃える海の中》に、里奈は居た。とても恐ろしい、海。それは確かに自身の心にも在るものだった。だけど、里奈がまだその《燃える海の中》に居るとは思ってもみなかった。
(もう、過去になったんだと思ってた。いつもは何とも思ってないみたいに、僕の事怒ってたのに)
忘れていないのは自分だけ、そう思ってきた暉にとって、鈍器で頭を殴られたような出来事だった。
一緒に居続けても、分からない、里奈の気持ち。
気が付くと、無意識のまま水中展望室に来ていた。両親を、一瞬で死に追いやった面影はなく、居心地のいい、空間。
眼前の硝子越しの海を見つめると、暗闇の中、「奴」の存在を感じた。
(お父さん、お母さん)心の中で呼ぶ。この空間に両親の想いは残っているのだろうか。

「あなたは、そこにいますか?」

暗闇を見つめ、ぽつりと、呟いた。声は静かな展望室に一滴、波紋を広がらせ、消えた。

「暉……?」

背後から、声。振り返ると、アルヴィス制服姿の里奈が立っていた。まだ帰宅しては居なかったのだ。目が腫れていた、やはり泣いていたのだろう。

「帰ったのかと思った」

「あんた置いて帰らないよ」

「……別に、置いてってもいいよ」

「あっそ」

とげとげしい会話。声が出ても出なくても、それは変わらなかった。沈黙が重くのしかかる。
この場で「都合良すぎるんだよ!馬鹿!」と言われた事を思い出す。それは今も考えている。何が「都合いい」のか。ファフナーに乗って声を取り戻した事だろうか。それは、失う「原因」に自ら乗る事で、過去に近付けた気がしたからだ。そして、《あの》ファフナーに乗れれば、もしかしたら、両親と一瞬でもいい、会えるかもしれない。
それを言えば、また里奈に怒られるだろう。先程の芹のように。過去を望むのは悪い事なのか、都合よすぎるのだろうか。
それが死に至る道だとしても、自身の、硝子越しの《底なしの暗闇》は、それを望んでしまうのだ。幸せの為に。

「……里奈は、死にたくないの」一言、聞いてみた。先程の芹との言い争いの中で、里奈は皆が生きる事に固執していた。
自分自身の気持ちを伝えるよりも、この一言を聞けば分かると思った。暉自身の考えがどう思われているのか。

「は……?何、あんた、死にたいの?」

「別に、聞いてみただけだよ」

「死にたくないに決まってるじゃん!」

大声で主張する。

「死にたくないし、誰にも死んでほしくない。芹だって……っ」

「それを、本人にいえばいいのに」

「言えないよ!」

「何で?」

「何でって……分かんないよ、私だって」

里奈の思考が絡まる。ただ、『芹に死んでほしくない』と言えなかった。それは、先程の言い争いの中での里奈の直感だった。芹の中では「芹自身の命」の優先順位がとても低い気がしたからだった。

(何それ、分からないよそんなの……!)

だから、芹自身ではなく、「みんなの命」を天瓶に掛けたのだった。芹もそれには揺らいでいたが。もっと揺らいでほしい、そして芹自身も大事に想って生きて欲しい。そう思っているのに。

「……暉、あんたは……」

【死なないでよ】という言葉が声にならなかった。
暉の《底なしの暗闇》が、頭を過る。暉もまた、死に近いのだろう。
死んでほしくない、片割れの存在。でも、「死んでほしくない」と伝えて、何が変わるのだろうか。もし、暉が、《自身の想いを理解されている》と知って早まった行動をしてしまったらどうしよう、と不安になる。
(暉にだけは死んでほしくない、だから、ファフナーにだって、乗ってほしくないのに……!)
ファフナーに乗る事で声を戻した暉。両親がいつまでも大好きな、暉。

結局、【死なないでよ】という声も、何も出ずに、黙って項垂れた。しかし、絞り出すように、言った。

「私は、死にたくないし、みんなに、生きててほしい」

絶望の海の中、一人佇む里奈。その隣で暉は思った。そして、小さく「言葉」にした。

「里奈は、生きてなきゃ、駄目だ」

自身が望む道は言わずに、里奈の事だけを言葉にして。その言葉に今度こそ目を見開いて、里奈はわなわなと口を開く。

「……あんたは、あんただって……」その後は声に出さなくても分かる、願い。

「…………」その声を静かに受けて、暉はもう一度、目の前の暗闇を視た。
希望と、願いと。声に出せず、お互いの気持ちは、すれ違ったまま、交差した。



▼立上芹 Ihr Gedanke



フェストゥムを「殺す」。生きている命を「殺す」。
「助けて」と叫ぶフェストゥムを「殺す」度、芹は自身の身体を裂いた。戦闘中、自身に傷をつける、狂った行為。しかし芹はマインブレードを取り出し、躊躇わずに傷をつけた。(私には、これしか、出来ない。こんな事しか)芹自身、どうして良いのか全く分からなかった。
フェストゥムの嘆き、友達の怒り、侵食される島を守らなければいけないという目的。

(それでも、みんな生きてるじゃない!)

答えの出ない《葛藤》を続けながらも、一体、また一体と「殺して」いく。そして自身の身体に傷をつける。目眩がする。

(乙姫ちゃん。私は、どうしたら、この戦いを止められるの。どうしたら、どうしたら、どうしたら)

傷は増える。せめて痛みを共に背負う為に、忘れない為に、自身が出来る唯一の事。

戦闘が終わり、傷の痛みが身体に鮮明に残ったまま、この場所に来ていた。ワルキューレの岩戸。
決して入ってはいけない区画と言われているが、芹は自由に入れた。黙認されているのだろう。もしくは、乙姫の意思なのか。今はその「自由」に感謝した。乙姫に会いたい。その一心だった。
《乙姫》は居ない。けれど、この気持ちは痛みは《乙姫》の前でしか話せない。
そうして、薄赤い部屋へ辿り着く。人工子宮の中では《乙姫》赤ん坊がすやすやと眠っている。

「乙姫ちゃん……」

そのすぐ傍に座り、呆然と子宮を見上げる。島の核として生きる、少女。全ての痛みを感じているのだろうか。揺らぎも、体温も、開花も、全て。
悲しくなった。どうして、こんなに、「死」が溢れているのだろうと。混み上げてきた想いは涙となって、溢れ零れた。ただただ、声を上げて泣いた。

「私は、どうしたらっ、いいの!どうしたら命をっ、守れるの!この痛みを《覚えてる》だけじゃ、どうにもならない!でも、それしか出来ないのっ……!」

慟哭は島の中心で響いた。

『芹ちゃん』

響いた声が反響するように、声が、した。記憶の中に鮮明に残る、穏やかで優しくて真っ直ぐで、でも可愛らしい、声。

「え……?」

『芹ちゃんの答えにはならないけど、』

脳に響く乙姫の声が。

『あなたにしか、出来ない事だから』

優しく芹の涙を掬った。
瞬間、芹の脳内に自身の《出来る事》が、イメージのように流れ込んできた。解決にはならない、けれど、命を守れるなら。

「乙姫ちゃん、私、出来るかな……」

声が震える。この場で決断した乙姫の最期が過る。《島》になった彼女の。

「私、乙姫ちゃんの傍に行けるよね」

そう問いかけた声は反響する事はなかった。しかし芹は立ち上がる。
自身の役割の前に、やらなければならない事がある。奪い続けた命を、弔う。それが、「今」出来る唯一の事。泣いてなどいられない。出来る事を、やらなければいけない。

「私にしか出来ない事、私は、やるよ……乙姫ちゃん」

そうして、温かい岩戸を、自分を奮い立たせる様に、出ていった。

再度岩戸を訪れた時。芹は自身の《役割》の詳細を伝えられた後だった。

独り岩戸を訪れる。次にここを訪れる時はもう、《島の一部》になる時だ。

「乙姫ちゃん、私怖くないよ、こわくない」そう言葉にする。

かつて、この場所で乙姫の最初で最後の「少女」としての叫びを聞いた。見送るのが辛かった、涙が止められなかった。
それでも、最後の笑顔は頭から離れない。「少女の叫び」と、「最期の笑顔」。
声も、震えも、言葉も涙も。キラキラと身体の消えていく過程も、笑顔も。全てが鮮明に、焼き付いて、離れない。
だから、ここに来て、話す事を止めなかった。それだけ、大事なのだ。過去ではなく、今現在も。

(乙姫ちゃんの事、本当に、本当に大好きだから)

もっと沢山話したかった。もっと沢山触れあいたかった。もっと「乙姫」個人の人生を共にしたかった、けれども。彼女は自らの意思で、この「島」の命になる事を決めた。

(だから、私は呼吸をする度、乙姫ちゃんを感じる。笑顔を、体温を)

「乙姫ちゃん、私、ちょっとだけ、嬉しいんだよ」

彼女に向って笑う。

「人間だけじゃない、虫や植物。フェストゥムも。生きようとする命を、私は、ただ、守りたいの。だから」
そうして、不安を、声に出した決意で固める。

「私、怖くないよ」



▼廻り、繋がる想い



「芹……」

里奈が不安そうに芹を見つめていた。その不安を打ち消すように、芹は笑った。ぎこちない笑み。仕方無い、不安は尽きない。けれど、やらなければいけない。自分の最善を尽くして。

「行ってくるね、里奈」

「うん……、乙姫ちゃんを、よろしくね」

乙姫が居なくなってから、里奈はコアを《乙姫》とは呼ばなかった。しかし、今は、呼んだ。芹の想いの為に。
里奈自身、誰もコアの存在を《乙姫》と同一視していないのは分かっていた。しかし、芹が《乙姫》と呼ぶ度に、まだ引きずっているのではないかと不安になっていた。
里奈は「自分が前を向かなければいけない」と必死に想いを貫いていた。しかし今は、違う。
そんな里奈の言葉に芹はゆっくりと頷き、笑った。その笑顔に、里奈も笑った。
里奈と芹がまともに話をしたのも、これが久し振りだった。いや、久し振りと言うには余りに短い期間だったが。それだけこの数日の戦闘で、関係はとてもぎくしゃくとしたものになった。
どちらが悪いという事ではなく、ただ、《一番大事なもの》が違うだけなのだ。だから、一緒に笑えただけで、それはとても幸せな共有なのだと、芹は思った。
芹は「またね」と言った。里奈も「うん、またね」と言って笑ったが、目の端から涙が零れた。




自身が《島》になる瞬間、皆の顔を見た。
皆、こちらを視ている。バラバラの気持ちが、こちらに。それだけで、想いはひとつなんじゃないかと思えた。

(これで戦いがなければ、幸せなのになあ)

なんて、芹は間の抜けた事を思った。
皆が、芹の生き様を刻み。各々《前》を向いて、歩き出した瞬間だった。
平和を望みながらも、《誰か》の為に、戦いの中へと。

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